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2011年6月 6日 (月)

特別展「写楽」と特別展「五百羅漢」

午前に「写楽」、午後に「五百羅漢」を見てきました。

Photo_6 Photo_7  [ 写楽]

先日山種美術館の「ボストン美術館展」で
鳥居清長(38点)・喜多川歌麿(51点)・東洲斎写楽(20点)を見たときに写楽の大首絵は4点しかありませんでした。
今回は4作品を除く約140点全部を見ることの出来る特別展でした。
チラシに載せられた5点を見てもわかるように、大胆にデフォルメされた歌舞伎の役者絵こそいかにも写楽です。

写楽は寛政6年(1794)5月、江戸三座の役者を個性豊かに描いた大判雲母摺り28枚を1度に出版するという華やかなデビューを果たし、翌年正月に忽然と姿を消しました。その間たった10ヵ月(閏月を含む)。
第1期が5月の28図。大首絵、大判。
第2期が7・8月の38図。大首絵がなく、すべて全身像。
第3期が11月・閏11月の64図。背景を描いた役者絵。
第4期が翌寛政7年正月の12図。連続した背景の細版のみと相撲絵。

3期ごろからすっかり元気がなくなって、これが写楽の絵とは思えないほど。
5月8日にNHKで写楽は何者かという解明がなされた(私は見られなかった)ところによると、ギリシャにあった写楽の肉筆画から能役者の斎藤十郎兵衛であることがわかった。
描かれた歌舞伎役者からデフォルメされた顔が嫌われ、だんだん人気がなくなったそうで、1年に満たないうちに消えてしまったとのこと。
もし5月のだけが写楽画とすれば、島田荘司の説も頷けたけれども、肉筆画発見もあって、とても受け入れられなくなりました。

同じ役者を描いた写楽以外の浮世絵師の作品と比較できるのも魅力的ですし、摺りの時期や年数が経つにつれ色が違っているのを比較していて面白い。

Photo_8 Photo_9 [五百羅漢]

こちらも空前絶後の展覧会です。
今年は浄土宗の開祖・法然上人が遷化されて800年を記念して「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展が開催されました。
全100幅に500人の羅漢様の生活、仕事、修行(頭陀)、六道、地獄に落ちた人を救う、超能力、ペットなど、煩悩を克服し悟りをえた修行者の羅漢様の営みが描かれています。
一信が約10年かけて96幅まで製作し、病没し、残り4幅を妻と弟子が完成させ、1863年に増上寺に奉納されました。
昭和20年まで増上寺山内に妻が建てた羅漢堂に数幅ずつ公開されていたが、戦後誰も鑑賞することなく眠っていた100幅を遂に一挙公開で見ることができるのです。
いやはや、強烈な筆のタッチ、色使い、迫力、奇怪、奇想などと表現してもし尽くせぬ凄い絵。羅漢ビームが劇画調で描かれ、あるいはユーモラスに描かれていて圧倒されっぱなしでした。

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コメント

上野でやっている「写楽展」、私も興味がありましたが、もう最後の週となりましたね。
混んではいませんでしたか?
上野では去年「長谷川等伯展」で80分並びましたよ。

ナゾの絵師「写楽」についてはこれまでも何かと見聞きしてきましたが、僅か10ヶ月で姿を消したのですか?
NHKの番組は見損ないましたが・・・

午後からは「五百羅漢展」!
美術展のハシゴは結構疲れます。でも好奇心は若さの秘訣!
私も見習わなくては・・・

投稿: naoママ | 2011年6月 7日 (火) 07:26

★naoママさま

「写楽」展の方はとても混んでいました。
中高年だけでなく、若い人まで大勢鑑賞していました。でも入場制限はありませんでしたよ。長谷川等伯は凄かったですね。

写楽は誰の謎は江戸時代から推理されていたそうで、島田荘司の『写楽 閉じた国の幻』で、「おぉ、こんな人と推理したのね」と面白く読んだのでしたが、時期的に無理があると、後で気が付きました。2期以後は別人が描いたとすれば当てはまるのですが。この度のNHKの放送では決定的な証拠があったようです。面白いミステリじみた写楽ですね。
またとないチャンス、是非いらしてください。ありがとうございました。

投稿: tona | 2011年6月 7日 (火) 08:06

10か月でもあれだけ充実したときを過ごしたら死んでもいいと思いました。

投稿: 佐平次 | 2011年6月 7日 (火) 09:54

写楽展に五百羅漢展、充実の一日でいらっしゃいましたね!
私は、tonaさんがご覧になれなかったNHKの番組を、展示会作品を
ちまちま作りながらほとんどナレーションの声だけ聞いていました。
いつも見たことのない番組でしたのにほんとに偶然。
面白かったです。なぞに包まれていた写楽が誰であったのか
どうして消えてしまったのか、ミステリーが解き明かされましたね。
すばらしいインパクトある代表作に、現代の私たちは魅力を感じますが、
当時の江戸っ子たちには受け入れてもらえなかったのは、多くの画家が
後の時代になって初めて価値を認められる例が多くあることと重なりますね。
写楽は身分上の制約があったことも思う存分才能を飛躍させられない
枷となったことでしょう。どこまでも伸び伸びと才能を開花できていたら
どんな作品を残したのでしょうね。

狩野一信の五百羅漢はほとんど何も知りませんでしたが、鑑賞したら
人間とは何かを考えさせられそうと感じました。

投稿: ポージィ | 2011年6月 7日 (火) 10:06

私はそのNHK番組を見ました。
でもtonaさまは
見ておられないのにも拘わらずここまで
詳しく記事を書かれているのに驚きました。

東京にいた平成4年に増上寺にも参りました。
でも東京のどのお寺も関西には及ばずあまり印象にはないのです。

精力的に見聞されてすごいです。
今度はどちらにお出かけかしらと楽しみです。
私は最近怠けています。

投稿: matsubara | 2011年6月 7日 (火) 10:19

 まさか同日に2つ行かれたとは!
 しかもどちらもかなりヘビーな展覧会。
 いつもながら、tonaさんの精神力には頭が下がります。
 わたしは結局写楽の方は行きませんでした。
 それにしても、片や10ヶ月、片や10年間の集大成ですが、どちらもインパクト十分ですね。10ヶ月の写楽の方が圧倒的に(世界的に)有名というのもおもしろいです。

 tonaさんが「ペット」とお書きになってるのには、大笑いしてしまいました。
 確かにペットみたいでしたが・・・・。(笑)

投稿: Nora | 2011年6月 7日 (火) 15:08

★佐平次さま

短期間でも空虚な時間を過ごすのでなく、充実して過ごしたら、燃え尽きてもいいなんて!何事にも代えがたい仕事が出来たらそう思うでしょうね。
我が人生にはなかったです。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2011年6月 7日 (火) 15:55

★ポージィさま

再放送があることを祈っています。
こんなに長い間論争が繰り広げられ、30数人の該当人物が挙げられ、それでも解決ならず迷宮入りのような写楽の正体が暴かれたその瞬間の映像が見られなかったなんて。
その時に価値が認められない運命の画家、最たる人がゴッホです。あんなに多く描いたのに、生存中に売れたのが1枚だけって、今の値段を聞いただけでも涙が出ます。

そうですか。身分上の制約があったのですね。それにしても能役者が画家で、素晴らしい才能の持ち主だったのですね。

木や石の五百羅漢と違って絵で表されたのは迫力が違いすぎです。
五百羅漢を訪ねると、今は亡き大切な人に対面できるという信仰が広まったそうですが、何せ羅漢は男性、大切な女性には出会えそうにありません。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2011年6月 7日 (火) 16:10

★matsubaraさま

NHKの番組はタイムリーだったですね。
見られなくて非常に残念、録画の手段があったのに気が付かなかったのが痛手でした。
再放送に期待したいです。

私も2年くらい前に増上寺に行きました。お蔵にこんな素晴らしい絵があるとも知らず、また浄土宗であることも知らずに、徳川の廟や水子地蔵に気がいっていました。恥ずかしいです。
おっしゃるように、京都や奈良の神社仏閣に匹敵するようなのがこちらにはなくて、あまり出かけません。鎌倉はまだ独特の風情があるのですが。

今年は秋にならないのに、絵画展が目白押しです。原発事故で来なかったのもいくつかあります。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2011年6月 7日 (火) 16:29

★Noraさま

今回はさすがに2つはくたびれました。
写楽の方は2時間半もいました。

おっしゃるように10ヵ月と10年なのに
どちらもすさまじく、多くの感動を与えてもらえました。
版画が数多く海外に流れ、影響を与え、また大切に収集されたことは日本にとってもとてもラッキーでしたね。
世界特にフランスの画家とのつながりが出来て、いろいろと深く絵を楽しめます。
今年もいろいろな節目に当たって素敵な展覧会があって、震災のことがありましたが、嬉しいことでした。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2011年6月 7日 (火) 16:32

写楽の作品は世界に発信できる貴重な日本文化ですね。見ることもありませんが。
また五百羅漢も興味がありますね。

煩悩を克服し、悟りを得た修行者の営みとはどうものでしょうか。絵を直に見てみたいですね。

インドでもこの種の絵を見てきましたが日本の画とはまた少し違うのかもしれません。

貴重な珍しい情報有難うございました。

投稿: macchanny | 2011年6月 7日 (火) 20:01

★macchannyさま

今回どのように全部集めたかですが、東京国立博物館が日本では1番たくさん所有していますが、半数以上はアメリカ、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダから借りてきたようです。これらの国で大切にされているのですね。歌麿や鳥居清長、広重、北斎など浮世絵も随分外国にあります。

羅漢たちは勉強したり、様々な活動をし、また地獄に落ちた人を救済したりと大活躍です。
インドでは神様がたくさんいらっしゃるのでしょう。お釈迦様の弟子筋に当たる羅漢もインド生まれではあるわけですね。今はインドでは仏教がないのですよね。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2011年6月 7日 (火) 20:29

浮世絵の「写楽」展。興味深いです。
日本古来の芸術品が、昔はなんの意味もなく外国へと流れてしまったんですよね。
今思えば何と勿体ないと思います。
こちらでは、なかなかこういうものは見る事が出来ません。
「五百羅漢」も見て来られたのですね。
独特の絵柄で、見るものを吸いこんでしまいそうです。

投稿: pochiko | 2011年6月 8日 (水) 22:39

★pochikoさま、ありがとうございます。

特に版画の浮世絵は何版も刷れるので、何でも陶器などをくるむのに使われて海外にたくさん流れたそうですね。
そこで向こうの芸術家(ゴッホやモネなど)が影響を受けてどんどん日本から購入するようになったとか。
そのおかげで本家本元にはないのがこうして外国からも来て、見ることが出来ました。

写楽も五百羅漢もなんて凄いのでしょうとしか言葉になりませんでした。
興味を持たれていらっしゃるのに遠くて残念ですね。

投稿: tona | 2011年6月 9日 (木) 10:27

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