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2012年1月20日 (金)

映画 『ブリューゲルの動く絵』

Photo_2 2011年、ポーランド・スウェーデン製作

ブリューゲルの絵画「十字架を担うキリスト」を取り上げている映画。
この絵はウィーン美術史美術館の「バベルの塔」の隣にあった絵ですが、見ているはずなのに、何も覚えていません。

題材がキリストの時代なのに、背景はフランドル、時代はブリューゲルの生きた16世紀なのだ。
絵の中に入り込んでいくというか、絵から人々が動き出し、絵の中で行われていることが再現されていくのである。
例えばちらしにある高い岩の上には風車が回っているが、その内部は洞窟のようになっていて粉が挽かれている。
ある家の中では子どもたちがあばれ回り、ある家では母子がパンを捏ねるなどいろいろ写し出される。30分以上サイレントでこんな情景が続き、貧しい庶民の生活が垣間見られる。そして人が捕えられ十字架を担い刑場へと引き立てられて行く。。

ブリューゲルの他の絵と同様にたくさんの人々が画面を埋め尽くし、そこには様々寓意が込められている。
キリストはローマ政府に引き渡され磔刑に処せられた。がこの絵では、当時のスペイン・ハプスブルグの圧政下、理由もなく(のように見える)赤い服を身にまとった兵士に引き立てられ、暴力を受け、処刑され、鳥の餌食にされる。
こうしてブリューゲルは当時の世相をたくさん盛り込んで描いていったのだ。またさらに面白いのが、人々の服装である。絵にある通りなのだが、当時こんなに人々は変化に富んだデザインの服を様々に着こなし、色彩も豊富であったと驚くのだ。

ブリューゲル役のルトガー・ハウアーは自画像のブリューゲルに似ているということで抜擢されたらしいが、オランダ人である。映画の中では老人の(実際にルトガー・ハウアーは67歳)役だが、ブリューゲルは40歳くらいで亡くなっている。自画像を見ると本当に年取って見える。
他の絵にも、人間は愚かであるといった類の意味ある行動がたくさん描かれ、細かく見て行くと面白そう。
当時の世相、風俗が見られ、不思議な世界を覗かせてくれた映画でした。

Photo_3

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コメント

お早うございます。
こちらは昨夜の雨が路面を濡らしています。
全国的には雪ですね!

映画は面白そうですね。当時の生活を絵画に表わし、それが映画として展開する。
人間はおろかというのが分かるような気がします。
いつの時代もそうなんでしょう。
私たちは映画をみて時々は反省しなければならないですね。
関心があるのは当時の生活と今の違いから今の方が良いと思えるのでしょうか?

投稿: macchanny | 2012年1月21日 (土) 07:38

★macchannyさま、おはようございます。

昨日午後にはやんでしまった雪が雨になったものの、また今日も小ぶりの雪です。でもこのお湿りが肌を潤し、喉にも優しいです。

特にブリューゲルは人間の愚かさを絵にたくさん現わしました。解説なしでは意味がわからないですが、森洋子氏が解説している本が存在するはずで、いつか見てみたいです。

何を読んでも、映画やTVで観ても、「昔が良かった」とは私には言えません。今の環境では1番いい時代に居合わせたことがしみじみ有難く思えますから。
まあ、こう言えるのも健康であってこそのような気がします。病気になったらそのことだけに気が向き、暗い日々になりそうだからです。そんなことではいけませんね。

投稿: tona | 2012年1月21日 (土) 08:53

 
こんにちは。
このような映画があること知りませんでした。面白いですね。
寓意に満ちた絵画の世界が現実の世界となって人々が息づき始める。
小説を読んだり絵を観たりするとき、登場人物の行動など
頭の中で想像するものですけど、どうしても想像しきれないですよね。
そんなところも補い、また自分の想像とは別の展開も見せてくれる
というのが映像の面白さでしょうか。物語の映像化は常ですが、
絵画からの映像化というのは珍しいような気がしました。
自分が知らないだけかもしれませんが。

投稿: ポージィ | 2012年1月21日 (土) 11:54

私もウィーンの美術史美術館に行きましたが
忘却の彼方です。
一度にたくさん見ますので記憶は難しいです。
特にブリューゲルのような示唆に富んだ絵は
深く考えないと分かりませんね。
寓意についてもいろいろ聞いていますが・・・
映画になりそうな場面の絵もありますものね。
よい映画を見られましたね。

投稿: matsubara | 2012年1月21日 (土) 13:19

★ポージィさま、こんにちは。

新聞広告で見ました。
ブリューゲルの絵はちょうどあちこちで見ましたが、絵の中の人々を1人1人丁寧に見たことがありませんでした。
この映画に使われた絵はその中でも知られていないのですが、はやり1人1人意味があって、その歴史的背景までこの映画からわかるという面白い趣向の映画です。
よい服装をしていますが、時代が時代ですから、食べ物も貧しく、住居も粗末であることがわかりました。庶民は御上に搾取され、乱暴されとても気の毒だったのですが、ブリューゲルの絵では明るいのですね。
仰るように確かに絵画からの映像は珍しいですね。ですから筋がないと言えばないのですね。ありがとうございました。

投稿: tona | 2012年1月21日 (土) 16:46

★matsubaraさま

ウィーン美術史美術館ではブリューゲルの絵があったなあとかフェルメールの絵があったくらいしか覚えていません。しかもブリューゲルは10ちかくありましたっけ、ごく有名なのしか覚えていません。
あんなに1枚の絵に人々がいますと、その一人一人の寓意を説くのは、机上でしかだめですね。それを見てから出かけて鑑賞というのは今まで殆どありません。
珍しい映画で楽しみにしていたのが、絵からそのまま抜け出た人々の服装でした。
いつも誤字ばかりですみません。見なおしたつもりがこれですから、本当にだめで恥ずかしいです。

投稿: tona | 2012年1月21日 (土) 16:53

ウィーン美術史美術館の「バベルの塔」は、ガイドさんの説明もあり、私もよく覚えていますが、隣にあった絵画「十字架を担うキリスト」はさっぱり思い出されません。

この絵の中の人々が動き出すのですね。
NHKのBSで、時々朝の7時15分からやっている「迷宮美術館」が面白くて似ている感じです。
ドガの踊り子が実際に踊り出して、絵の中の人物の関係や描写など、物語り形式で説明されます。

画家の映画と言えば一昨年だったかしら?
ガルパッチョがありましたね。
もっと昔に見たフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が面白かったです。
実際にオランダまであの絵を見に行きたくなりました。

大寒に入り寒い日が続きますね。
昨日の雪はあっと言う間に消えましたが、今日も明日もミゾレ模様・・・
お風邪など召しませんように。

投稿: naoママ | 2012年1月21日 (土) 23:33

この映画、気になっていたのですが
やはり筋はないような感じなのですか…
ブリューゲル好きな人ににとっては
きっとたまらないのでしょうね。

「真珠の耳飾りの少女」はストーリーがあるのですが
絵の背景の実話ではなく、あの絵から監督が想像した世界だったと思います。
大きな展開はなく、私には物足りなく感じました。
ただ画面の一つ一つがとても綺麗で
フェルメールの絵を観ているような気持ちになりました。

投稿: zooey | 2012年1月21日 (土) 23:56

★naoママさま

ああ、やっぱり「十字架を担うキリスト」は印象にありませんでしたか。
そういえば、迷宮美術館には規模が小さいながら、このような趣向がたくさんありましたね。気が付きませんでした。
思い出させてくださってありがとうござます。
ドガの踊り子のもそうでした。
カルパッチョも他の人にないような人生で劇的です。

「真珠の耳飾りの少女」は2004年に現地で観ました。そして帰国してすぐに映画を観ましたのでとても印象深かったです。あの女優さんもその後めきめき売り出しましたね。
実際に観に行くのがいいですが、今年6月でしたか、都美術館に来るはずです。

乾燥砂漠のあとのお湿りが心地よいですね。

投稿: tona | 2012年1月22日 (日) 09:24

★zooeyさま

はい、筋がありません。
絵から抜け出てきた人々の絵にない家の中などが出てきますが、罪人が十字架を背負ってこの広い草地を歩いていく場面が中心でしょうか。そして横暴な兵たちのあり様が印象深く映されます。
絵の中の顔に似た人や、栄養状態が悪いにも関わらず、醜く太った人なども出てきてブリューゲルの他の絵と同じようです。

「真珠の首飾りの少女」はやはりオランダのあの時代の室内中心に絵の中から少女が飛び出した感じでしたが、淡々としていました。
監督の創り出した映画としてはブリューゲルのは何か不思議な感がありました。

投稿: tona | 2012年1月22日 (日) 09:35

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