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2014年1月26日 (日)

『はなとゆめ』冲方丁著

290x420_290x420冲方丁さんの3冊目の著書です。

『枕草子』がいかにして生まれたかがわかる歴史小説。
清少納言が一条帝妃・定子の女房として仕えるいきさつ、宮廷に渦巻く権謀術数の闘争に明け暮れる世界に巻き込まれていく様子や、道長によって定子を取り巻く派があらゆる手段で追い落とされ破滅に向かわされようとする様子がえがかれる。
そうした中、主君定子中宮の温かい思いやりや心遣いに感涙し、いただいた紙に心の赴くまま綴るようになる。それが宮中に持ち出され、広く読まれて、またどんどん書き足していって出来上がったのが『枕草子』だ。日本女性初のエッセイといったところ。
まるで今のブログやツィッター発信のような形だ。

それにしても、歌は平安貴族のたしなみであったが、三十一文字に愛や皮肉や挨拶など軽妙なやり取りを、あっという間に紙にしたためるというその機知、教養の高さに舌を巻く。
博学で漢学の知識も深く才気煥発な清少納言は、輝かしいばかりの定子の恩寵を得、多くの公卿や殿上人との贈答や機知を賭けた応酬は宮中での語り草となった。当然妬まれ、揶揄を浴び苦しい日々を送る。しかしそれもすべて中宮様のためならなんでもないこと。受けて流すためにも何か綴ることで心の平静を取り戻す。
気が強そうだがユーモア溢れるそんな彼女も、宮中ではおどおどびくびくして顔も上げられない、いつも冷や汗をかいている人として描写されるのが意外。また離婚、再婚、死別、再婚し、二人の子供を産んでいる人でもあった。
『枕草子』は数年前読んだけれども、何も読み取れていなかったので、また読み直したい古典の1冊です。

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コメント

この作家の小説は読んで時が経った後に急に主人公やその世界がリアリティを持って思い出されます。
これも読んでみたいな。

投稿: 佐平次 | 2014年1月26日 (日) 10:08

★佐平次さま

早速にありがとうございました。
そう、思い出される作家ですね。
前2作からいきなり平安時代です。
これを読んで「枕草子」をもう1度読みたくなりました。

投稿: tona | 2014年1月26日 (日) 17:24

こんにちは
冲方丁さんの本、まだ1冊も読んでいないのですが、これもまた
興味をそそられる作品ですね。
いつかそのうち、とばかり思っていないで、何か1冊でも
読んでみなくては。
古典の授業で習った枕草子は、ほんの一部ながら豊かな感性と
知性等感じられるものでしたが、冲方丁さんの小説の中では
血の通った女性として少し近くに感じられそうです。

投稿: ポージィ | 2014年1月27日 (月) 09:45

冲方丁さんの本、読んでいません。
これから探してみます。
前に紹介頂いた阿川さんの本も
まだです。すごく長いロングセラー
ですのに・・・
お父上さまから来た葉書は大切に
しています。もう30年も前ですが・・・

投稿: matsubara | 2014年1月27日 (月) 12:44

★ポージィさま ありがとうございます。

さすが作家さんは資料から、枕草子から時代背景とともに、人々の心情まで汲み取って細やかに描写しています。
教育を受けた頂点に立つ平安の人々の様子が伝わってきます。
気が強そうに思われる清少納言も笑いあり、涙ありで、動揺する様子まで書かれてなかなか興味深い人となっています。
教科書で習ったのと違った清少納言を楽しめると思います。

投稿: tona | 2014年1月27日 (月) 15:47

★matsubaraさま ありがとうございます

阿川弘之氏のお手紙があるのですね。
凄い宝物です。

私は佐和子さんの本はたくさん読んでいるのに父上の本は1冊も読んでいませんでした。
佐和子さんから見ると頑固で雷親父のようで、奥様が偉いなあと思ったりしました。

投稿: tona | 2014年1月27日 (月) 16:02

こんばんは (◎´∀`)ノ
枕草子と言えば高校時代の古典の授業で少し読んだだけです (^_^;;
最近は本を読むことすらなく…、これではいけないなぁ…と思いながら、やはり読まない…。
清少納言と紫式部はお互いライバル視していたのか、互いに相手の悪口を言い合っていたとか…?
どんなことを言っていたのか、そんなことが書かれていたりすると面白いかな?!

投稿: 慕辺未行 | 2014年1月28日 (火) 22:54

★慕辺未行さま ありがとうございます。

おはようございますsun
私も枕草子は高校の教科書で少しだけ勉強しました。それが数年前読んだのです。はきはき物言い、明るくストレートな人と映りました。
紫式部の方が清少納言についてあからさまに悪口を言っているようです。
高校生の頃は紫式部派でしたが今は清少納言の方が性格的に好きになった私は随分変わりました。
ちなみにこの小説には時が少しずれているので、紫式部のことは出てきませんでした。

投稿: tona | 2014年1月29日 (水) 08:12

面白そうな本ですね。
清少納言の名はあまりにも有名ですが
>離婚、再婚、死別、再婚し、二人の子供を産んでいる
というのは存じませんでした。
あの時代にも離婚や再々婚なんてあったのですねえ。
哀れな晩年を送ったという俗説は
事実ではないのでしょうか?

投稿: zooey | 2014年1月30日 (木) 19:07

★zooeyさま

私は枕草子を読んでみたときに、なんとなく独身で、今で言うキャリアウーマンかと思っていました。
事実は違って、離婚した人とはのちに友人として仲良く付き合っていました。最後の結婚は定子が亡くなっていたので、ご主人の任務先について行って平和に暮らしたようです。
作者は文献に当たって研究もされたでしょうから本当でしょうね。

投稿: tona | 2014年1月30日 (木) 19:29

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