« 冬牡丹 | トップページ | 徐福伝説について »

2014年2月10日 (月)

川口マーン惠美著『住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち』

著者は冒頭いきなり尖閣諸島に上陸した様子を綴り、ドイツとフランスにおけるアルザスの奪い合いの話へ進み領土問題の核心に入る。つまり領土問題は実効支配をしたものが勝つ。現在は軍事力の後ろ盾がなければ発言権を失うであろうという要をドイツは承知していると。
日本人は論理を構築できず、論文が書けない。討論で自分の意見が言えない。これらが出来ることは世界の常識であり、グローバル化した世界と競争するにもかかせないことで日本の教育の内容に欠けている重要事項だ。もう一つ英語が出来ない。大学に入ってまで英語を教えるのは日本だけ。
ドイツは反原発の勢いが盛んになったころ、日本の福島事故があったため、2011年6月には脱原発の法律が成立したのだ。しかしドイツの様々な事情によって、矛盾も多く、カバーする再生可能エネルギーに切り替える道が遠く困難を極めることがかなりのページをさいて語られる。

病気のとき有給を使う日本人を信じられないドイツ人は、一方休暇そのものがストレスの原因になっているという。
閉店時間法と言う法律があるドイツでは日曜祝日は店を開けてはならない。週38時間と労働時間は短く賃金は高い。一分でも余計に決して働かない。一分でも超えればとても腹を立てる。閉店間際に入れば、あからさまに嫌そうな顔をする。私がホテルでまさに経験したことで、納得です。閉店10分前の電話には絶対に出ない。時間内に仕事をこなそうと皆が焦って不機嫌だそうだ。
ドイツの教員は、授業をする時間数に沿って給与体系が定められている。家に帰ってまでも採点には不満を感じる教員。給食もなく、放課後のクラブ活動は一切なし。夏休みなど休みは誰も登校しない。

一番驚いたのはドイツの鉄道。サービス皆無。事故を起こしても、放送は一切なし。勿論お詫びなし。車内で長時間待たされた挙句に下車させられ、そのあとの案内一切なし。その他いろいろ読んでいるとドイツの鉄道は悪い方の世界一だ。何だか信じられない。
ギリシャやイタリアなどユーロの揺らぎはドイツにとっても大変な問題だ。ドイツ人が絶対しない仕事、失業しても、生活保護をもらってもしない、それはゴミ収集だ。EUからの移住者が増え、出稼ぎ労働者は帰国しない。賃金崩壊や失業の問題、犯罪など抱える問題が多くなった。

宅配が全国くまなく走り、それも2時間単位の配達時間指定はドイツ人もびっくりらしい。どんなところにも自販機が並び、コンビニが24時間営業している。駅や電車や公衆トイレは清潔だし、今はまだ暴動も起きないし、テロとも無縁だ。こんなことも奇跡のようなことだと筆者は言う。

8勝がどれで、2敗がどれとは著者は言っていません。聞いていた話もありますが、内情にはびっくりすることが多く、通りすがりの旅行者にはわかろうはずもない。やはり住んでみた著者の貴重な体験は、私たち平和ボケの日本人にありがたさを教えてくれ、世界に組していくための示唆を与えてくれる本でした。

           エゴノキの老木は何だかとても苦労したみたい
280x420_200x300


|

« 冬牡丹 | トップページ | 徐福伝説について »

コメント

普独戦争があったのでドイツとフランスは、
今も仲が悪いのだと思っていました。

領土問題も今も尾をひいているのですね。

欧州全体のマラソンで、フランス人は
ドイツ人に負けたくないし、ドイツ人は
フランス人に負けたくないと息をまいていました。
テレビでの話なのですが・・・

ドイツでの鉄道の旅は避けた方がいいですね。
以前コンパーメントに乗ったのですが
快適でした。事故なしでよかったと
今頃胸をなでおろしています。

知人が長くドイツにご主人と暮らして
おられたのですが、よいことしか言われなかったので
いささか驚いています。

投稿: matsubara | 2014年2月11日 (火) 10:24

ドイツを巡る旅から帰られたとき、タイムリーに本屋さんに
山積みになっていた本ですね。
書かれていた内容を伺って、びっくりのことが幾つもありました。
何となくぼんやり、こうだろうと思っていたことと違っていたり。
住んで暮らして初めて見えてくることも色々あるのでしょうね。
鉄道のサービスの無さや、時間に縛られそれ以上は絶対働かない
といったことは、何だか共産主義国に持っていたイメージと
重なります。愛想は無くても真面目で勤勉で、日本人と共通面がある
というようなイメージがあったのが崩れました。
ごみ収集の仕事を絶対!やらないというのも意外でした。
エコ教育も家庭でのエコも徹底しているというイメージを持っていた
のですが、それとごみ収集を嫌うのとは、別の事なのでしょうか。
よく分かりませんね。
 

日本も問題はいっぱい抱えていますが、色々な場面での至れり尽くせりの
サービスは、他の国から見たらすごいことなのかもしれませんね。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックのためにも、
おもてなし・サービスの質を見直すこと、上っ面の形式だけの
ものではなく提供できていること、などが求められていく気がします。
 

投稿: ポージィ | 2014年2月11日 (火) 10:56

なにに価値を見出すか。
おもしろいですね。

投稿: 佐平次 | 2014年2月11日 (火) 11:15

 いろいろな国の人たちと接して、共通的にいえることは、彼らは自己中心に行動してる。
 日本人みたいに、勤勉さや責任感。協調性、
はほとんどないと言っていい。
 自分の仕事の範囲だけはしっかりと守る。
自分の仕事に対するプライドを守ろうとする。
自分の非をなかなか認めない。責任転嫁といったところが強い。
 決められた仕事、実働時間にあまりにも忠実。ノルマなんてとんでもない。
その代り、余暇は思う存分楽しむ。
 こういう習慣は、日本人も見習ってほしいと思った。日本の会社人間には、とても考えられないことと思った。 
 時間外、自分の仕事以外をさせると必ず代償を要求された。

  まあ、全部がそうかわかりませんが、日本人が彼らと付き合うとき、日本人の感覚ではとんでもないトラブルが起こることもあると自覚しなけれなならない。
 国民性、生活環境、習慣の違いのせいなのでしょうね。
 イツの鉄道は使ったことがないのでわかりませんでしたが、驚きました。
 観光客旅行もそうなんでしょうか?

投稿: 夢漢人 | 2014年2月11日 (火) 12:22

★matsubaraさま

ありがとうございます。
アルザス地方の問題ですね。人は変わらねど言葉が変わる。ドーデの「最後の授業」は思っているのと違うようで、日本の教科書になぜ載ったのかと著者は言っていました。
日本も今隣国3国に悩まされていますので著者はドイツから魚釣島までやってきたのでしょう。
今もドイツ・フランスは決して仲良いというわけでないですが、日本の隣人のような態度ではないと思います。
そう、ドイツの鉄道に乗られて事故がなくて良かったです。
住んでみないとわかりませんが、さらに勉強しないとわからないでしょう。

投稿: tona | 2014年2月11日 (火) 13:36

★ポージィさま

ありがとうございます。
そう、あの本が図書館から順番が回ってきました。
この著者はかなり電力のこと領土のことなどいろいろ勉強しています。それでないとただ住んでいただけではわからないことがたくさん書いてあります。
私もドイツ人と日本人ってかなり性格的に合うので、こんなにも考え方が違うとは思ってもみませんでした。
労働に関しては実にシビアで驚きます。
ごみ処理の仕事をする人を確保するために他国から労働者を移住させたのが、今は上記のような問題を抱えることになってしまいました。

日本はサービスの悪いところはほとんどなく、少しでも悪いとやり玉に挙げられます。
毎日が気持ちよく過ごせてありがたみを忘れています。この点ではストレスゼロの日本です。
でも政治的にはますます大変になって、メルケル首相のような人が現れません。
都も知事が決まってこれからオリンピック・パラリンピックに向かって始動しました。さてさて、大変でしょうけど。

投稿: tona | 2014年2月11日 (火) 13:51

★佐平次さま

ありがとうございます。
そうですね。不便であっても喜ぶ国民性。鉄道でも文句を言わないのもその国民性、考え方が同じだからですね。

投稿: tona | 2014年2月11日 (火) 13:53

★夢閑人さま

ありがとうございます。
自己中心的で自己主張がはっきりしている。それが長所でもあり、日本人から見るとそうでなく映るわけですね。
戦後からの日本人の勤勉さは世界一。今それが失われつつあると聞きますが、全体的にまだまだありますよね。
夢閑人さんが書いてくださったとおり、ドイツ人そのものです。
それがいい面もあり、でもドイツ人さえもそういったことが時にはストレスになっていっているというのが笑えない話ではあります。
著者が指摘した日本人に欠ける面を補って国際的に対等にやっていける教育は大切と思いますが、一方ドイツ人のような考え方はちょっと受け入れられないと思いました。
鉄道は事故が起こったときは観光客も同じ目に遭うでしょう。ツアーの場合は添乗員さんが働きますね。

投稿: tona | 2014年2月11日 (火) 14:00

こんばんは (◎´∀`)ノ
ドイツへはドイツ人の友人がいるので今まで3回訪れましたが、やはり旅行者と実際に暮らしている方とでは、全く異なる印象なのでしょうね。
ドイツと日本だけを比較しただけであるのなら、少し残念な気もします。
鉄道事情に関しては、もっともっとひどい国、いくらでもあると思います。
悪いほうの世界一とは、言い過ぎなんじゃないかなぁ…?と感じる私です。

投稿: 慕辺未行 | 2014年2月11日 (火) 23:13

★慕辺未行さま

EUで指導的立場にありけん引し落ちこぼれ国に援助をしているという素晴らしい国ドイツもある面では苦悩していることがよくわかります。
その優秀な国を本のタイトル通り日本と比較しています。
鉄道に関して世界一と言っておられる著者はもちろん発展途上国などいろいろ行っているようには思われませんのですべての鉄道事情は把握しておられるか?
ただ読む限り、事故の時の従事する人たち、乗務員の態度がかなりのようです。他の国はどうなのでしょうかね。
たくさんは乗っていませんので、そして遅れたこともなかったので私の経験では比較もできませんです。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2014年2月12日 (水) 08:26

私もこの本、新聞で見て気になってました。
御紹介ありがとうございます。
ドイツ人のイメージを覆す内容に驚きました。

>サービス皆無。事故を起こしても、放送は一切なし。勿論お詫びなし。車内で長時間待たされた挙句に下車させられ、そのあとの案内一切なし。

これはしかし、他の国でもあり得るようです。
私が経験した限りでは、アメリカ・イギリス・イタリア・フランスでそうでしたよ。

投稿: zooey | 2014年2月12日 (水) 22:28

★zooeyさま

ありがとうございます。
ドイツについては国際結婚も多いそうですし、気質が合うらしいですね。でもやはり遠い欧州の民族、考え方が違って当たり前で日本が世界でも特別に違うということは指摘され、いい意味でも大震災で紹介されたところですね。

鉄道の車内の気温が60℃になって言いに行っても車掌が取り合わず、子供たちがバタバタ倒れてやっと動いたというような話も載っていました。
私はアメリカ、スイス、ロシア、スペイン、ペルー、イタリア、タスマニアなどで乗りましたが、時間が正確で何事もなかったので、このようなことには遭遇しませんでした。

投稿: tona | 2014年2月13日 (木) 08:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/146506/59107141

この記事へのトラックバック一覧です: 川口マーン惠美著『住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち』:

« 冬牡丹 | トップページ | 徐福伝説について »