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2014年2月17日 (月)

佐野洋子著『シズコさん』

佐野洋子さんって、まるで男のような、竹を割ったようなさばさばした性格と物言いと、好き嫌いがはっきりしていて、全部さらけ出ししまうような正直さに驚く。
どうしてこんな女性がいるのか!育てた母親ってどんな人だったのか?

この本のタイトルのシズコさんこそ佐野さんの母親である。
幼いころ手をつなごうとしたら拒否されて以来、母親が嫌いになって、年取ってからも母親の体に触れるのもいやで出来なかった。
その後子供には過酷な水汲みなどの労働を息つく暇なくさせられたなど母親に対するうらみつらみを書きつづけるのである。
そしてそのお母さんは誰に対しても「ごめんなさい」「ありがとう」を、言わない人だったのだ。またその母に知恵遅れの弟妹がいたのだが、両親共々面倒を見たのは妹さんだった。つまり佐野さんの叔母さんである。シズコさんはその世話をしないだけでなく、その家に近づこうとさえしなかった人だった。
そんなひどい母親でありながら、料理、縫い物、整理整頓、夜などの不意の客の世話や応対など家事については有能で、しかも他人に親切で優しく、地域の人や友人にも好かれて頼りにされた。
50歳くらいで逝った夫亡きあとは、働いて子供たちを学校へやり、家まで建ててしまったと言う強者だ。老後旅行したりいろいろな趣味に没頭したり優雅に過ごしていたが、同居した嫁(この人がものすごい悪妻)に自ら建てた家を追い出され、佐野さんと2年・同居後、佐野さんは高額の施設に入れる。
そこで呆けていく母親に佐野さんの心は氷解し、母親に「ごめんね」と言い「母さん、呆けてくれてありがとう」、「自責の念から解放された」「生きていて良かった、こんな日が来るとは思わなかった」と泣くのである。

実はこの頃佐野さんは癌に侵されていたのである。母が亡くなって自分も4年後に亡くなる。
『役に立たない日々』に癌発生から転移、残された日々が一部に語られる。悲劇でありながらとてもおかしいのだ。
その中に
<私はがんがストレスになっていないのね。昔から死ぬことが全然怖くない。目の前で家族がごろごろ死んでいったのを見たから。望んでも望まなくてもそうなっていくってわかっていたから。自分の死はわからないじゃん。たぶん命って、自分のものじゃなくて、周りの人のためのものだと思う>
とあって普通の人と大分違う人生観も、彼女の性格とそれを培った環境、母親が一部糸を引いているのかもしれない。
余命二年と言われたら、十数年間苦しめられていたうつ病が殆ど消えたのだそうだ。佐野さんのような文章を書く方がうつ病と不安神経症に苦しめられていたなんて知りませんでした。

           もう実感がなくなりましたが14日(金)の梅たち
 

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コメント

この本は衝撃でした。
私は彼女の絵本「百万回生きた猫」と対比させて読みました。
こんな優しい絵本を書いた人が
実母とこんなにも軋轢があったなんて、と驚きました。
よかったら御笑覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/franny0330/s/%A5%B7%A5%BA%A5%B3%A4%B5%A4%F3

投稿: zooey | 2014年2月17日 (月) 19:58

★zooeyさま

早速にありがとうございます。
拝見させていただきました。
『百万回生きた猫』と対比させたのはいいですね。
私も童話は感銘を受けました。
しかし佐野さんのこれらの本で、何も悲しくない猫は二人を指し、最後に白い猫に会った時のことが、まだ和解もしてない二人だったですが、和解の姿のような感じだなあと思いました。

投稿: tona | 2014年2月17日 (月) 20:29

お母さんよりも本人の方が”変人”だったのかもしれない。
似た者親子なんでしょうね。
洋子さんの本は面白くて切ないです。

投稿: 佐平次 | 2014年2月18日 (火) 11:17

★佐平次さま

私から見て、とても変わった方です。
好きになる人はとことんだったでしょう。
親子甲乙つけ難いです。
悲劇なのに何だか笑っちゃいますね。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2014年2月18日 (火) 15:26

雪化粧をした紅梅・蝋梅・南天が綺麗ですね。
それぞれの花と葉の色が、周囲が白くなったことで鮮やかに見えます♪
 

佐野洋子さんといったら「100万回生きた猫」は読みましたが、
そんな壮絶?な母娘関係の人生だったことも、100万回…が母子関係が
投影されて書かれているととれるものというのも驚きでした。
 

このごろ、母親の束縛から解かれることについて本を書く人も
ちょくちょくいますね。
佐藤さんの母子関係は少し違うかもしれませんが、
がんじがらめになっていたことに変わりは無いのかもしれませんね。
 

投稿: ポージィ | 2014年2月18日 (火) 17:02

★ポージィさま

美し雪化粧でした。しかし重い雪であちこち大きな被害が出ているのには心が痛みます。
寒いので余計辛いですね。

私もこの母子関係が「百万回生きた猫」に投影されていると思います。
お母さんもいろいろですね。何だか信じられない感じでした。
しかしこの本で知りましたが、どんなに叱られても、嫌味を言われても、暴力さえ受けても、著者は決して泣かなかったそうです。ずっと泣かないで育った子供ってこれまた信じられません。親子の人生の終わりでお互いに気持がほぐれて良かったです。一生そうはいかない人もいるでしょうから。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2014年2月18日 (火) 18:43

猫好きの息子と嫁が買って来た絵本が
『百万回生きた猫』だったのです。
私も読ませていただきましたが
あれは大人のための絵本のような気がします。
そう言う話を書ける方なので
『シズコさん』も何か屈折した様な愛情を感じました。

投稿: pochiko | 2014年2月18日 (火) 23:11

★pochikoさま

その通り、私もそう思いました。
まあ、息子さんご夫婦は猫好きなのですか。
家に帰ると癒されるわけですね。
シズコさんも娘から見るのと他人が見るのとかなり違った人物になります。
なかなかにユニークな方で憎らしくは思えませんでした。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2014年2月19日 (水) 08:15

zooeyさんのブログでこの方の事は
初めて知りました。
そして著書の100万回生きたねこも
借りて読み、ブログに書いたことも
あります。
いろいろな人生があるものですね~
著者はナイーブで傷つきやすい人と
思いました。

投稿: matsubara | 2014年2月19日 (水) 20:32

こんばんは (◎´∀`)ノ
佐野洋子さんの名前、聞き覚えがあるし記事の内容も以前にも聞いたことがある話のような・・・と思っていたら、やはりそうでした。
すでにコメントされていますが、zooey様が『100万回生きたネコ』のブログ記事で書かれていました。
せつない親子関係だと思いながらも、最後は許せるのですね。
今の私と母の関係とは、真逆です。

投稿: 慕辺未行 | 2014年2月19日 (水) 23:49

★matsubaraさま ありがとうございます。

著者は子供のころからずっとどんなときにも決して泣かない、涙を出さない人ということで、凄く強い人と思いましたが、中年過ぎてからでしょうか、糸が切れたように不安神経症やうつ病を患っていたということで、同じ人と思えませんでした。
人間の心って見かけや行動などで判断できない面があるのですね。

投稿: tona | 2014年2月20日 (木) 08:24

★慕辺未行さま ありがとうございます。

おはようございますhappy01
ずっとずっと繰り広げられた親子の葛藤がこんな形で母親の人生の終わりで和解ということもあるので、本当に佐野さんにとって心穏やかな余生になったわけです。
慕辺未行さまはそうなんですか。それにしても介護は大変と、慈悲深い慕辺未行さまでもお疲れになってしまうと拝察します。

投稿: tona | 2014年2月20日 (木) 08:31

私の周囲を見ても、人間ソトヅラとウチヅラが全然違う人の方が多いように思いますが・・・
佐野洋子さんのお母さまは特にそれが強かったのですね。
母娘というのは、「二卵性母娘」が多く見られますが、案外骨肉の葛藤を抱えて居る人も多く、近年クローズアップされていますね。
私も似たような思いを持っていました。

佐野洋子さんの本は殆ど読んだことはありませんが、私もこの所死について色々考えさせられています。
遺作の「死ぬ気まんまん」とともに、この「シズコさん」と「百万回生きた猫」、読んでみたいと思います。


投稿: nao♪ | 2014年2月20日 (木) 11:09

★nao♪さま

シズコさんはあまりに違うので驚きました。
そういう方いますか。私はあまりまわりに見かけないのですが。
特に家庭内暴力を振るう人の話には胸が痛みます。
そう、母親との葛藤を抱えている人がかなりいるそうですね。可哀そうに思います。
佐野さんの本はどんどん読めて、深刻な話もそうでなく、ユーモアもあってなかなかです。
『死ぬ気まんまん』はまだですので私もそのうちに読みたいです。
何しろ死ぬこと、癌でさえも何も恐ろしくなかった人なので驚きです。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2014年2月20日 (木) 16:46

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