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2014年7月 7日 (月)

清和研二著『多種共存の森』

今年もクレオメ(フウウチョウソウ科)が咲き出しました。
クレオメは学名で和名は「西洋風蝶草」「酔蝶花」、英名はスパイダーフラワー。
夕方濃いピンク色で咲いて、だんだん薄くなり、翌日午後白くなって枯れる。

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花弁は4枚で中央に太い雌しべがあり、その両脇に3本ずつ計6本の細い雄しべがある。Dsc01641_420x279
朝になると、次の段の花の蕾の下部から雌しべと雄しべが出ているのがわかります。夕方濃い色の花弁が開くのでしょう。279x420

清和研二著『多種共存の森』
国土の70%を占める森林が、戦後の杉など針葉樹林一辺倒と言う森林政策によって破壊の危機に晒されているという問題と、それを1000年と言う単位でいかに更生していくかと言う途方もない難問題解決の方法を、多面的に述べている好著だ。
あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たず的な、森林行政は実に難しいことが、たくさんの実験と世界の論文紹介を通して述べられる。
杉林、これは水源涵養林とはならず、土壌も貧弱で土砂災害の危機に晒される。
樹木、キノコ類や草本、動物、昆虫などが一体となった生態系豊かな森林こそこれから求められ、日本の森林発展になる。単一林のように一つの機能だけを取り上げたゾーニングは有益でない。
間伐し、有用広葉樹の混交林、多種共存の森にしていくことが豊かな森への道だ。広葉樹は針葉樹と違ってパルプチップの原料にしかならないということで敬遠されてきたが、かと言って針葉樹林では荒廃するだけと矛盾を抱えるから、広葉樹の製品化技術を会得し、家具建具のデザイン性を高めていかねばならない。

しかし生物多様性の保全だけで成り立った森林でさえ、そこで生活してきた山の人々を排除し(もう山では生活できなくて都会への人口流出で超高齢化が進み、若者はUターンしない)、野生の生物だけを保全しようとする。
山村で暮らせるように森と人が共生する社会を築きあげていかねばならない。生物多様性に富む収入のある森へと転換していくのが理想だ。そこへ至るであろう困難な道をさらに著者はあらゆる角度から考察する。
何しろ樹木という相手は一季節、一年単位で収穫するものではなく少なくとも30年、50年、100年と途方もない年月を要するからそこまでを見極めた上の計画がなされなければならない。だから木の出荷だけでなく、多種類の山菜やキノコ、マムシや小動物の毛や皮などから細い木、低木、灌木さらにツルまで有効活用し、それらを森林浴だけでなく観光にまで持っていかなければ山村の人口は減り続けていくのみだ。
こうした著者のような学者の活躍や、東日本大震災から立ち上がった被災地の人の勇気ある森の育成や活用の行動で、日本の林業を立て直す方向に少しずつでも前進していることは素晴らしい。
都会人もいろいろな角度から日本を見つめなおしていかねばと警告された一書だ。知ったことに満足し、何もできない自分がいるだけというのが情けないけれど。

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コメント

頂きましたクレオメは、かなり遅れています。
もうこんなに本家は育っているのですか。
比較すると自信をなくしました。

あらゆるジャンルの本を読まれるのには感心
します。
岐阜には他県にはない、森林アカデミーという
大学校まであるのに、あまりよく知りません。
この学校も生徒不足で県も困っているようです。
地味な大学校ですから・・・学校全体が木材で
出来ています。学長と知り合いでした。
弁論大会の実行委員長などを頼みました。

岐阜県民の歌の最後は、「岐阜は木の国
山の国・・・」です。

投稿: matsubara | 2014年7月 8日 (火) 15:23

こんにちは
 
クレオメの花を近くで見たことがないのですけれど、こんな咲き方を
するのですね。花弁が開く前にオシベがするりと滑り出てくるとは。
カーブしたオシベについている雫は何でしょう?雨?朝露?蜜?
花開くのは夕方からなのですね。いや~面白いです。覚えておきます。
 
多種共存の森 いいですね。すぐにめざましい結果は出ないかも
しれませんが、こういうことをきちんと考え、長いスパンで見直し
実行していく動きがあること、嬉しく思います。
日本は山と森林で国土の大半が成り立っている国。
そして豊かな山・森と豊かな水や農作物とは切っても切れない
関係にあることを見直し、同時に林業のあり方も見直していくことが
急務なのですね。
スローライフに戻っていかねば… と思います。

投稿: ポージィ | 2014年7月 8日 (火) 15:59

tonaさま
昔、職場の後輩から聞かされた話ですが、実家の山が一人暮らしのお母さんだけでは下枝を刈ることができず、荒れ放題になっているとこぼしていました。

投稿: evergrn | 2014年7月 8日 (火) 18:18

★matsubaraさま ありがとうございます。

岐阜県は県民の歌があるのですか。
よそにもあるのかしら。県花とか県木は知っていたのですが。長野県もありましたね。
そして森林アカデミーまであるとは。でも生徒不足とは悲しい現実です。こんなに森林がある国ですからこういう大学こそ大盛況でなければならないはずですのに。

東トルコには何故山などに木がないのでしょうかと疑問に思いましたら、雨が降らないらしいです。ですから植物が生えないのですね。シリア国境まで行きましたが、そこはクルド人がいたらしいのですが、今シリア紛争であのあたりが映されると、東トルコと同じと思いました。
緑豊かな雨の多い日本はそういうことをありがたく思ってこれ以上荒廃させてはいけないのだと思わされました。

投稿: tona | 2014年7月 8日 (火) 18:57

★ポージィさま ありがとうございます

毎年咲いているのを見るのに、今までこういう風に咲くとは気が付かなかったのです。

さらに夕方近くに見ていましたら、蕊たちが先に飛び出し、そのあと4つのうちの花弁の1枚がパカッと出てきました。面白い咲き方をしますね。雨の雫です。

もう今こそスローライフでいかなくてはですね。地球が悲鳴を上げている今こそ、森林に恵まれている日本は対策を考えていかなければなりません。
江戸川で無用な大堤防に反対する人の家が強制的に取り壊されています。人工的なものを必要とされるところもありますが、本当は森林がしっかりすれば洪水は防げるのだそうですね。
温暖化で今回のようなモンスター・スーパー台風なども増えるそうで狂った気象に、この森林が対策の一つとして考えられそうです。

投稿: tona | 2014年7月 8日 (火) 19:12

★evergrnさま ありがとうございます

子どもたちがみんな都会へ出て行ってしまっている現在、このような話はたくさんあるのでしょうね。こうしたいろいろな問題を考えて対策を考えていかなくては、どんどん荒れた森林が増えていってしまいます。やはり魅力を感じる従事する人が増えていかなければなりませんが難しいです。

投稿: tona | 2014年7月 8日 (火) 19:17

そうなんですよね。
なにもできない。
でも知らなかったよりはマシですね。

投稿: 佐平次 | 2014年7月 8日 (火) 22:02

こんばんは happy01
こちらでもクレオメが?!
「西洋風蝶草」「酔蝶花」とも呼ぶのですね。
今までも何度か見たことがある花でしたが、名前はずっと知らないままでした。
『多種共存の森』、読んではいませんが、森林伐採の問題は日本に限らず、世界中であるでしょうね。
特に途上国のほうが酷いように思います。
地球温暖化やCO2削減が叫ばれるようになって、ようやくどの国も失われた森林を復活させる動きが出てきたように感じます。
が、以前の姿に戻るまで、いったいどれほどの年月がかかることやら・・・。

投稿: 慕辺未行 | 2014年7月 8日 (火) 22:50

★佐平次さま ありがとうございます

そうですね。
知ることで自己満足ですが、どこかで何かでまたつながるといいなあ。

投稿: tona | 2014年7月 9日 (水) 08:22

★慕辺未行さま ありがとうございます

おはようございますcherry
クレオメはあまり雑草化していないとのことで、そう言われてみますとどこにも見かけるというわけではありませんね。

森林伐採の問題は焼き畑でどんどん開墾していくインドネシアや南米で問題になりましたね。
しかしその国の事情もあったし、攻められないことでもあったらしいです。でもそのツケが恐ろしい形でやってきて、私たちの贅沢な暮らしと相まって復習を受けているのが現状です。
ただ、他のことと違って恐ろしく年月がかかるということですね。森林学の発展を祈りたい気持ちです。

投稿: tona | 2014年7月 9日 (水) 08:30

こんばんは。
以前からオイランソウと言えばクレオメのことが思い浮かべます。
フロックスのこともオイランソウと言いますが、イメージとしてはクレオメの花の蕊が花魁の簪を連想しますね。(^^)

日本の国土の3分の2は山林なので豊かな水も豊富で自給自足もしようと思へば成り立ちますよね。
花散策で山に出かけていた時、杉山の水は茶色くて汚いのですが、雑木林の周りの水は澄んでいて綺麗でした。
町に住む人たちも美味しい水が飲めるのは山林が管理されてこそだと思うのでもう少し山の仕事の方たちに税金の免税など考えてほしいと思う町に住む私たち夫婦の日ごろの会話です。(^^)

投稿: アザミの歌 | 2014年7月 9日 (水) 19:48

★アザミの歌さま 

なるほど、クレオメの花の蕊が花魁の簪ですか。蕊が長くて目立ちます。
オイランソウとの出会いは軽井沢の夏でした。雑草のように道端に咲いていました。

やっぱり杉山の水と雑木林の水の色が違うのですね。気が付きませんでした。
これは重要なことですね。
山で人に働いてもらうことは大変な仕事だけに、看護師たち同様、給料がよくないとだめですね。免税も実施されるといいです。
貴重なお話ありがとうございました。

投稿: tona | 2014年7月 9日 (水) 20:41

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