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2015年9月17日 (木)

北斎と鴻山

銀色夏生さんの『つれづれノート1』の中に次のような文がある。
「苦手な人は好きなことをしてない人です。そういう人ってグチッぽいからです」…本当にそれは多くは当てはまるかもしれない。「嫌い」と言わず「苦手」というところがこの著者の言葉の使い方が上手いなあと感ずる部分である。
詩人、随筆家、写真家の作者のごく若いころの作品で初めてであるが、この1冊だけでも私から見れば、ちょっと風変わりな人で、面白い行動者に見える。今年、もう『つれづれノート』は28冊目が出たそうで、現在50歳半ばまでどのような世界を泳いできたのであろうか、興味深い人としてちょっと注目です。

兼好法師の『徒然草』に、「友に持ちたくないもの」として「体が丈夫で病気のない者」が挙げられている。
これに共感している人が小谷野敦氏『軟弱者の言い分』で冒頭に挙げている。
小谷野氏は反禁煙の主張をしたり、法廷闘争や法廷トラブルを15,6も抱えている人で、かなり本を読むのも躊躇したが、軟弱者としての共通点があるので(でも闘争のことを聞いたり、本を読んでみると軟弱者では闘争できないし、書けないと思った)、結構惹きこまれている。

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諏訪春雄著『北斎の謎を解く』から…
小布施の豪農商・儒学者・浮世絵師で北斎の門人である高井鴻山の人となりと、葛飾北斎を温かい気持ちで歌った漢詩の口語訳が素晴らしいので引用させていただきました。
鴻山は小布施に北斎を招き、長逗留させて作品をたくさん描かせている。小布施に行くと栗のお菓子だけでなく、北斎や鴻山の作品が見られて、もう一度行きたいところです。

鴻山1.豪放磊落であって小さなことにこだわらない人である。
   2.学術技芸に精進している人である。
   3.節操を高く持っている人である。
   4.人情に厚い人である。
   5.平素は質素倹約を重んじているが、必要なときは千金も惜しまない人である。

鴻山が北斎を歌った漢詩の口語訳

来るときは招きによらず、去るときも別れを告げない。
行くも来るも自分の意思のままで、他人の拘束を受けることはない。
自在の変化を手中にし、心の欲するところに、生者死者が出現し、鳥獣も群がる。
画道はすでに抜きん出て、富貴をも座して待つことが出来るが、
七度は上に浮かび、また、八度は下に沈む。なぜ窮乏の身となるか。
あなたは見るであろう、冷たい冬を迎える者は、またよく盛りの夏を迎える者であることを。
冷冬も盛夏もみずから選んで世間にかかわらない。
先生の心の大らかさはまことに計り知れず、
人の熱意によらずわれわれのためにだけにわれのことをする。
落ち着いた顔が笑いを含んでいる観音の面、
風にさかまく波濤は岩にくだけて魚や竜が舞っている。
筆力は年が老いるに従ってますます強く、
巨大な障壁画にも気がみなぎり、みなぎった気は雲霞を貫く。
紙本絹本の絵の需要の多さもいとうことがない。
ただ一幅の唐代太宗の故事の絵が、絵の具の乾かぬままに残されている。

なぜ窮乏の身となるか?金銭無頓着だったことと、男子孫が放蕩していて、年取ってからもずっとお金をせびるので逃げ回っていたという話が伝わる。北斎は老荘思想と道教に傾倒していたそうで、絵にも影響があるそうだ。

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コメント

北斎の娘を主人公にしたアニメ映画「百日紅」を
今年になって観ました。
原作者は江戸風俗研究家の杉浦日向子ですので
それなりに本格的であると思います。
北斎、絵の天分は物凄いが
日常の生活には本当に頓着しない人であったようですね。
この鴻山が歌った内容にも納得できます。

投稿: zooey | 2015年9月17日 (木) 23:35

★zooeyさま

早速にありがとうございました。
杉浦日向子の漫画が見られなかったので、映画だけでもとも思っているうちに逃しました。とても見たかったのですよ。

いかにも天才らしい頓着しない性格の北斎は長女の息子には本当に苦労しちゃったみたいです。まだまだ芸域に達しないという思いで、当時としては考えられないほど長生きして、もっと昔の時代のミケランジェロも89才でしたか、この二人は怪物です。
それにしても、師であるそんな北斎を理解して、鴻山は温かみのある素敵な漢詩を書いていますね。

投稿: tona | 2015年9月18日 (金) 08:26

おはようございます
 
色々お読みになられたのですね。記事を拝見しながら、それぞれの本の
作者や書かれた対象の北斎に共通しているのは、確立した自分とともに
視野の広い目や関心、想像力かなぁなどと思いました。
なんとも曖昧でてきとうな感想で恐縮すけれど。
でも、文章でも絵でも工芸でも音楽でも役者でも、あらゆる表現者は、
天賦の才もながら、そういう内面の豊かさの抜きん出た人が
名を残しているような気もします。
的外れなことを書いていましたらお許しを…

投稿: ポージィ | 2015年9月18日 (金) 09:27

★ポージィさま

いつもながら鋭い考察をありがとうございます。
いつも気がつかない私です。
私、鴻山のような人になれたらなあと思いました。どれ一つとっても無理なのですが。
一方、北斎は天才、天才にありがちなマイペースの人、このような人をさらに援助して才能を押し上げていく鴻山のようなパトロンがいてラッキーな北斎でした。
結構北斎は長生き願望が凄かったらしいですよ。それでこの時代では最も長寿の一人です。兼好法師や小谷野敦が友に持ちたくない人になりますね(笑)

投稿: tona | 2015年9月18日 (金) 16:23

高井鴻山は小布施に行くまでは全く知らない
人でした。そして10年も経ちすっかり忘れて
います。
ようやく思い出せました。

ようやく今頃になりルコウソウが咲きはじめ
ました。ありがとうございます。
ハナオクラはまだ蕾です。

投稿: matsubara | 2015年9月19日 (土) 08:57

★matsubaraさま

小布施にはまた行きたいものです。今度はじっくり絵を見てきたいです。

我が家ではマルバルコウソウはすっかり終わってもう引き抜きました。
モミジバルコウソウはまだまだ咲いていまして、今種を採取しているところです。
雨ばかりでしたから花オクラも遅れたでしょうね。このお天気ですぐ咲くでしょうから、賞味してください。

投稿: tona | 2015年9月19日 (土) 09:08

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