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2015年10月 5日 (月)

極限

スティーヴン・キャラハン著『大西洋漂流76日間』によると、
海難事故の遭難者はどれくらいの漂流に耐えられるか。その答えは海難者の90%は、海難から僅か3日以内死んでしまうという。
食物と水をとらない場合でも、人間はもう少し長い間、生きられる。
問題は精神力で、76日間の孤独と恐怖に耐え、もろい救命イカダで飢えと渇き(手製モリで魚を獲り、手製の蒸留器で飲み水確保)に苦しみ、体重は20㎏も減って暑い太陽を浴びながら瀕死の状態から生還した著者の強靭な精神は、尋常のものではない。・・・本文は悲惨さがあまり感じられないユーモアと、洗練された美しい文章で綴られているのが秀逸と思う。

エピローグで著者が語っている言葉の中で感動的な一部分を引用させていただく。
「飢えと渇きを経験し、決定的な欠乏状態と絶望的な心理状態を直接経験したことで、この地球上でつねにそうした状況に置かれている数百万人の人々の苦しみが、理解できるようになったことである。今回の遭難によって、わたしは敗北感と、絶え間ない恐怖というものを味わった。だが危機に圧倒されるのではなく、そこからなにかを学びとっていくという姿勢を身につけた」
飢えと渇きを経験していないだけでも、そのような状態に置かれた人の本当の苦しみは一生理解できない私です。

Hon_200x300食物と水をとらないで何日生きられるか?1週間以内でしょうね。
修験道の荒行・大峯千日回峰行を成し遂げた大阿闍梨・塩沼亮潤師は2000年に四無行を満行されました。

四無行とは、断食、断水、不眠、不臥を九日間続ける修行です。 四無行は大変危険な行で、無事生きて行を終える確率が50%といわれています。

ちなみに「大峯千日回峰行」とは、奈良県吉野山にある金峯山寺蔵王堂(354m)から24㎞先にある山上ヶ岳(1719m)頂上にある大峯山寺本堂まで、標高差1355mある山道を往復48㎞、1000日間歩き続ける修行です。年間4ヵ月を行の期間と定めるので、9年の歳月がかかります。1999年に満行されました。

塩沼師は八千枚大護供をもされていますが、それは100日間五穀(米、大麦、小麦、小豆、大豆)と塩を断つ前行の後、24時間一昼夜飲まず、食べず、寝ず、横にならずで八千枚の護摩を焚き続ける行を2006年に満行されました。

1000年に二人しかできなかった荒行で、どんな理由があって、どのように挑んで、心のうちにどのようなことを達成できたのかは塩沼亮潤・板橋興宗共著『大峯千日回峰行』で知りました。

今日、ノーベル医学・生理学賞に輝いた大村智氏の研究されたことが何億という人を助けたとう。お祝いの言葉を述べられた山中伸弥氏も、これからご自身も苦しむ何億の人々を助けられるように研究していきたいというようなお話をされていました。
このように世の中はどんどん研究など進んでいき、また便利な快適な生活ができるようになっていくのに、それとは反比例して無残な戦争や殺戮が行われて、ますます人類が不幸になっていくような感じのこの頃です。

                今頃スミダノハナビが咲きました
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コメント

『大西洋漂流76日間』面白そうな本ですね。
子どもの頃からロビンソン・クルーソー、コンティキ号など漂流記が好きでした。
あまりにも悲惨なのは読むのがつらいですが
ユーモアがあれば救われますね。
水も食べ物もないという悲惨な状況。
しかし、そのような究極の状況を
アウシュビッツの飢餓室は刑として作っていたと思うと、空恐ろしいですね…

投稿: zooey | 2015年10月 6日 (火) 12:41

★zooeyさま

それに家族ロビンソンなどもありました。
漁船が漂流して鳥島にたどり着いての話とか、ロシアのエカテリーナ女帝に会ったとか、ジョン・万次郎の話しとかいろいろあります。
孤独と海の上での恐怖との戦いと違って、アウシュビッツ、戦場、いじめなど人によって引き起こされ、相対峙していかなければならない面の極源状態も、心が潰れます。これも怖い。アウシュビッツは希望のかけらもない。内容が違うので比較というのもままなりませんが、多くのことを学ばせていただいています。
ありがとうござました。

投稿: tona | 2015年10月 6日 (火) 13:29

こんにちは
 
「大西洋漂流76日間」機会があれば読んでみたいです。
サバイバル生活をしなくてはいけなくなったら、真っ先に脱落して
倒れるであろう私に、何かしら教えてくれるような気がします。
ユーモアを交えた美しい文章で綴られているとのこと。
厳しい体験を、そういう文章で書けるというところにも、
この方の精神力というか有り様が伺える気がしますね。
 
一方、自ら求めて死と紙一重の厳しい行を行う方がいる。
千日回峰行 のことは知っていましたが、四無行というものもあるのですね。
精神力だけで乗り越えられるものではなく、体がついていけなかった方は
命を落としたのですね。どうしてそのような苦行に身を投じ、そこから何を得るのでしょう。
この世の苦しみの極致を知ることで、世の中のすべての人々の
救いとなるべく…ということでしょうか。
記事を拝見し想像を絶する苦境や苦行のことに思いをはせながら、
ふと、同じような体験を経ても、そこからスティーヴン・キャラハン氏や
塩沼亮潤師とはまったく逆の方向へ思考が向かう人間もいるだろうことに
恐ろしさを感じました。
 
墨田の花火が咲きましたね。ご近所でも、夏や秋に返り咲いている
アジサイを見かけました。今年の気候のせいでしょうか。

投稿: ポージィ | 2015年10月 6日 (火) 16:33

★ポージィさま

こんばんは。
仰るとおりです。
苦しいことを苦しい苦しいと書くのと全然違っています。文学的な雰囲気さえ漂っていました。凄い才能ですね。
そして助けられたあとのことが普通の人と違うのです。尋常な人ではないです。

私も千日回峰行から何を得たのかが知りたかったです。難しくてもう一度読み返してみないとわからないです。
塩沼亮潤氏をテレビの対談で拝見したのですが、艶の良い、心底から元気がにじみ出ていて、心が澄んでいる人でした。感じの良い方です。生まれ故郷にご自身のお寺を建てて住職をされ、全国にも講演に行っています。
ご自身の生い立ちがとても不幸なことを話されていました。
共著の板橋興宗氏のお話がとても良く、フォローがいいです。
折しも新聞に0葬などでお寺が無くなっていくという記事に接しました。

アジサイの返り咲きは変な天候のせいでしょうね。
ありがとうございました。

投稿: tona | 2015年10月 6日 (火) 20:50

紫陽花のかえり咲は初めて拝見しました。
とても珍しいですね。

比叡山の苦行は、どういう方が達成されるのでしょうね。
信じられない世界です。体力も精神力も兼ね備えて
おらるのでしょう。

今朝は24番目の日本人ノーベル賞が出ましたね。
実は昨年受賞された名城大学の赤崎氏は夫と
同じ大学で、10年前からこの時期マスコミが
大学に押しかけていました。
もう一人そういう人がいますが、今年も
ダメでした。飯島先生がそうなのですが・・・

投稿: matsubara | 2015年10月 7日 (水) 08:12

★matsubaraさま

おはようございます。
1000年に二人しか生出来なかった、荒苦行では命を落とした人が多かったのではと思います。生まれ持った体力はそれほどではなかったようなのですが、精神力が体力をもつくりあげたような気がする方です。

日本の物理学は11人目でしたか。24人のノーベル賞受賞者のうち半数近くですものね。
赤崎氏の場合も10年前から候補にあがったりしていたわけですね。
学者で受賞者でありながら一番いろいろな事に尽くされていらしゃる大村氏には感動しました。ありがとうございました。

投稿: tona | 2015年10月 7日 (水) 08:42

生きる為の物資が無ければ、人間は永らえることは出来ないと思っていました。
実話を映画で観ることはたまにありますが、知恵の有無でしょうか。
時代は遡りますが、アメリカ彦蔵・大黒屋光太夫・音吉などの漂流者物語を読みました。
後に日本に帰れたり拒まれたりと、数奇な運命でした。

荒行の塩沼亮潤師、極める道を成し遂げたのですね。
言葉の重みが生きるって、こういう方のことでしょう。

投稿: だんだん | 2015年10月 7日 (水) 16:17

★だんだんさま

食べ物と水と塩、なかったら命なしですね。
私も吉村昭氏の小説などでこれらを読みました。
これこそ極限のお話、その生命力に目を瞠りました。自分の遊びというかそんなことではなく、いわゆる漁船の遭難ですね。
お互いに励まし合い、その中には命をつなげられるような力強い人が何人かいて、その人たちが実話として残ってきたわけです。鎖国をしていたので帰っても大変でしたね。

塩沼亮潤師のHPのブログがありますので毎日、ちょっとした良いお話を読んでいます。
ありがとうございました。
http://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_comment&id=133815370&blog_id=165298&return_to_comment=133815370

投稿: tona | 2015年10月 7日 (水) 16:57

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