『ガザに地下鉄が走る日』 岡真理著
著者は京都大学の教授で、現代アラブ文学・パレスチナ問題・第三世界フィミニズム思想が専門。東京外国語大学外国語学部アラビア語学科卒業。
カイロ大学留学時代やモロッコ日本大使館専門調査員時代にパレスチナに興味を持ち何度も訪れる。したがってイスラエル、ユダヤ人、ユダヤ教に対しては極めて批判的。
この本を読んでみると頷かざるを得ない説得力がある。
先の世界大戦でナチによるユダヤ人排斥運動で、ユダヤ人が600万人も殺され、私たちはフランクルの『夜と霧』を読み、アウシュヴィッツを見学し、杉原千畝の話に感動してきた。
ユダヤ民族の悲惨さをこれでもかとここに聞き及んできたのに、そのユダヤ人が、住んでいたパレスチナ人を排斥し、先祖の土地と言ってイスラエルを建国。その後の両民族の戦争は知らない人がいないほどに報道されてきた。しかしここまで深い内容も知らずにきたのだが、この本で情勢を知ることが出来た。
不思議・・・ホロコーストや収容所生活であんなに苦しめられたユダヤ人が、ずっとパレスチナ人に残虐な行為をしている。どうして?そこまでしなくてはならないのか。出来るのか?
仕返しするとしたら昔のナチスドイツ人にでしょう。しかし善良なるドイツ人もかつてどうしてあんな残虐な行為をしたのかも説明するのが難しいようだ。
ヨルダン川西岸地区とガザ地区はパレスチナ自治区でありながら、1967年に占領され、多くのパレスチナ難民が隣のレバノン難民地区や世界に逃れて行った。そこでの生活も悲惨ながら、自治区に住んでいる人々はなお悲惨である。ガザ地区はトンネルでエジプトとつながっていて唯一の物資の輸送が行われ、人々は一歩も出られなく人質同様の生活らしい。電気もガスも途絶え、下水設備も破壊され、汚物は全部海に流され、目の前の海が悪臭漂う、魚の摂れない状態へと変わり果てた。
西岸地区もイスラエルがどんどん植民し、塀を造って占領していき、60%はイスラエルの土地化しているという。パレスチア人をドローンで監視しているともいう。生活の自由は完全に奪われている。爆弾を落とし、どんどん若者の命を狙い、足を狙って行動できないようにする。
こうした生活に将来なんの希望も持てず絶望の中に若者たちは、心が壊れていくでしょう。すさみ、麻薬に手を出し、敵の爆撃に自爆で答えたりする。
そう、未来に何も希望がなく、国家も持てない生きる屍となった人々の悲劇は終わりそうになく、なんら解決も見つかっていない。
そこへ他の国がイスラエルを巡っていろいろ駆け引き。それでも世界最大級の強制収容所に現在いるパレスチナ人は何だか永久に救われないような。
国家を持てなかったクルド人もまた今大変な思いであり紛争が絶えない。
表題はガザ地区に住む子どもがガザに地下鉄が走る夢を絵に描いたことからきている。

ウンナンオウバイ
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コメント
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ヒトラーやナチスの残虐さを描いた映画が、今も毎年のように造られて観ています。
それはそれで真実でしょうし、感動作も多いのですが
つまりハリウッドでいかにユダヤ人が力を持っているかということの表れでしょうね?
2年ほど前、珍しくパレスチナ人が作った「オマールの壁」という映画を観て
片口からの情報では物事はわからないと
つくづく思いました。
投稿: zooey | 2019年3月12日 (火) 16:41
★zooeyさま
ああ、そうだったのですね!
ハリウッドにおけるユダヤ人の力。それを知ると、いかに偏って観ていたか納得です。
有難うございます。
そうそう「オマールの壁」ありましたね。
全くおっしゃる通りだと思います。
投稿: tona | 2019年3月12日 (火) 16:51
tonaさん、こんにちは~♪
ユダヤ人に関しては第2次世界大戦でナチスドイツの
標的になったことと、とても優秀な民族であること
ぐらいしか知りません。
ユダヤ人がイスラエルを建国したことは高校の世界史で
習ったような気もしますが、民族の違いも、
どちらが正義なのかも判らぬままこの歳になっています。
チコちゃんに「ボォっと生きてんじゃねえよ」
と、カツを入れられそうです。
こんな難しい本に興味を持たれるtonaさん、素晴らしいです。
ウンナンオウバイ、綺麗ですね。
投稿: hiro | 2019年3月12日 (火) 16:53
★hiroさま こんばんは♪
そうですね。ユダヤ人はどうしてあんなに優秀なのでしょう。混血もずっとなかったのに。
選ばれた民族としての自負があり、ずっと独特なユダヤ教を守ってきました。いろいろな事が重なり、とても特異な民族として古来ゲットーに押し込められるような生活をしてきた人々ですね。
そして虐げられて虐殺され、それを今度は逆にしているのですから、理解できそうで理解に苦しみます。
イスラエル側の事ばかりを多く読んだような気がして、そうするとパレスチナ人って何て懲りない人々と植えつけられています。読んでみましたら、この本は全くパレスチナ人側ですから、これで初めてその中の様子が、そして歴史がわかりました。
雲南黄梅はとても強くてどんどん増え、1年に何回も刈りこみをします。花は良く咲きますね。ありがとうございました。
投稿: tona | 2019年3月12日 (火) 19:11
とにかく聖書の時代から何千年もいがみあっている
民族ですから、そう簡単にいきませんね。
生まれながらにどちらも恨んでいるのですから
なかなか平和は望めません。
話し合いを持つ機会も難しいのですから・・・
医療用のガーゼは、ガザが発祥のようです。
ウンナンオウバイは、とても元気ですね。
わが家は鉢物は終わりましたが、庭のものは
まだ蕾です。
投稿: matsubara | 2019年3月13日 (水) 07:12
こんにちは。パレスチナの問題は複雑ですね。先日、塩野七生さんの「十字軍物語」を読了して、その歴史を改めて学びました。
投稿: 多摩NTの住人 | 2019年3月13日 (水) 08:21
★matsubaraさま
聖書の時代からいがみ合っていたのはパレスチナ人だったのですね。旧約聖書の時代でしょうね。
今も部族、民族の争い、宗教上の争いはもう絶対に和解できないほど深刻です。その点、日本はといつもおもってしまいます。
ガーゼの起源初めて知りました。今でも随分お世話になっています。
ウンナンオウバイ、そちらは外のはまだですか。こちらよりちょっと寒さが違うことがわかります。都心はもっと暖かくて何でも咲くのが我が家より早いです。
ありがとうございました。
投稿: tona | 2019年3月13日 (水) 08:52
★多摩NTの住人さま
「十字軍物語」ではアラブ人との闘いが書かれていて、宗教の争いの凄さもわかりましたが、欧州から中東への乗り物が発達してない時代の移動と戦争がいかに大変であったかを知りました。「ローマ人の物語」に始まって最近までの一連の読み物でかなり勉強になりましたね。
ありがとうございました。
投稿: tona | 2019年3月13日 (水) 08:58
こんにちは
難しい問題ですね。古代にまでさかのぼる歴史の中での
宗教的民族的軋轢・差別…さまざまなことから現代にいたるまでの
ほとんどを知らない私には、どちらの味方もできません。
でも、戦いが続き犠牲になる人たちが絶えない現状はあまりに悲惨です。
もう、どうにもできないことなのでしょうか。
仮に、もう一切やめて仲良く助け合って暮らしましょう、ということに
(奇跡的に)なったとしても、人々の心の内にはこの先も
子孫にまで延々と恨みは残っていくのでしょうか。
日本人は過去を水に流すことが比較的得意な国民性なのかも
しれませんね。日本のことを恨んでいる国々もあるのに
あっけらかーんと知らずに暮らしている日本人のなんと多いことか。
良いことでも悪いことでもあるようには思いますけれど。
投稿: ポージィ | 2019年3月13日 (水) 09:51
ポージィさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
今、またパソコンがいかれまして真っ暗。
スマホからやってみましたら、失敗でどこかに消えてしまいました。(ノ_-。)
森田アナの声が聞こえてくるようで楽しみました。
もう70年近く闘いが続いているのですね。
憎しみ合いはいつ果てるともなく、永遠に解決出来ないのではないかという感じですね。
日本は近隣諸国とうまくいっていません。
欧米諸国のように決して謝らない国と違って、舐められています。
毅然としていかなければならない。
本当に難しいことばかり。
折り合いをつけようとしているばかりの国民性ではますます馬鹿にされるばかり。
島国ってこうなってしまうのでしょうか。
宗教も仏教は違います。
投稿: tona | 2019年3月13日 (水) 15:36
差別、悲惨、憎しみ、、そのように神は世界を創ったのですね。
本書も読まなくては。
投稿: 佐平次 | 2019年3月14日 (木) 10:27
★佐平次さま
昨年11月に出たばかりの本です。
パレスチナ側からのは読んだことがなかったので驚いた次第です。
あまりにも絶望的で泣けました。
ありがとうございました。
投稿: tona | 2019年3月14日 (木) 11:28
ユダヤ人を知ったのはシェークスピアの戯曲「ヴェニスの商人」でした。
肉をもよこせの内容に、ユダヤとは何たる強欲なと嫌な感じがしました。
初歩的な知識がひっくり返ったのは、ホロコースト。
でも今は土地を奪って、パレスチナ難民にお構いなくイスラエル建国してますね。
余談ですが、シリア、スーダン、ロヒンギャ難民の行く末も真っ暗です。
家人から説明を受けますが、未来永劫収まらないと言います。
女子孫もアラビア語なので、来年の留学に備え現在短期でカイロ大へ行ってます。
幼い子供は、どんな想いで地下鉄を夢見ているのでしょう。
投稿: だんだん | 2019年3月15日 (金) 18:33
★だんだんさま
「ヴェニスの商人」そうでしたね!
一方「アンネ・フランクの日記」も熱心に読みました。
そうそう、スーダン、ナイジェリアのボコ・ハラムの酷さ、シリアもロヒンギャもでしたね。
ご主人様のおっしゃる通り、もう絶対に解決しない争いだと思います。
イスラムに関してニュージーランドでも逆に白人に憎しみを受けて?乱射事件が起こりました。難民受け入れはどこも後に事件が起こって大変です。
まあ!お孫さん、カイロ大学。勉学において第2の岡真理さんですね。そういえば小池百合子氏もそうだったとか。お孫さん、頑張れと言いたいです。
ありがとうございました。
投稿: tona | 2019年3月16日 (土) 09:00