高山病のこと
私の好きな山岳カメラマンでクライマーの平出和也さんと中島建郎さんが世界2位のK2の7000m地点から滑落したとのニュースが。
今までヒマラヤの美しい景色をたくさん見せていただいた。どうか無事で助かりますように。
歴史家の色川大吉氏はむしろ以前読んだ『フーテン老人世界遊び歩記』でフーテン老人として記憶し、また数年前最期の15時間を上野千鶴子氏の夫として上野大吉になったことで話題を呼んだが、『わが聖地放浪・カイラスに死なず』を見つけたので、卒業したはずのチベットに私の心はまた徘徊しています。
並外れて高所に弱い人が死んでもいい気でカイラス山にたどり着いた記録なのであるが、その執念恐るべし。スポンサーなしで旅行社のやる仕事を全部一人でこなし、やっとチベットの地を踏んだ。そこからカイラス山まで長い道のりを、みんなに助けられながら到着し、無事日本に帰ることが出来たのだが・・・
その高所障害(高山病)が凄いのだ。私はスイスとクスコ(3399m)くらいなので高所と言えず高山病未経験者であるが高山病になると凄いらしく、命を落とす人も多いとか。
フーテン老人さんはむくみ、食欲減退、倦怠感、吐き気、微熱、高熱、頭痛、咳のみならず、脈拍90から100を超え、PO値(血液中の酸素濃度)75になってたびたび、酸素吸入器、ダイアモックス(緑内障治療薬)、湯たんぽが用意され、ガモウ・バッグに入れられたりして移動していた。それも何回も何回もなのだ。
何が驚いたかってPO値だ。夫は80台に下がって訪問診療に替わり、79なんて言う数値が出て、酸素吸入器を入れてもらったが、肺炎になって入院に。退院後もカニューラを24時間つけて酸素値は動くと80台になるが90~92くらいに落ち着く。なのでフーテン老人さんの数値は生きていられるの?ということだ。ちなみに私は殆ど98をキープしている普通の人。ただ脈拍が朝はいつも90以上、昼は80以上とかあるので、以前ある医者にあなたはそんなに長生きできないと言われたがここまで生きることが出来た。
で夫は、最近早朝に酸素ボンベを付けて20mくらい歩くところまでになったが、そのくらいでもうどこにも行くことは出来ない。タダ寝ることと食べることが趣味化している。まだ本も読めるのでよしとしなくては。いえ、あの世から帰ってきてくれたのでありがたし。
高山病では登山家山野井泰史の奥さんの妙子さん(表面に出ようとしない控えめな人なので凄いクライマーであることは知られてない)が年とともにひどくなってヒマラヤの難峰ギャチュンカンに挑んだときは泰史だけ登頂を果たし、7500m付近で6日も無酸素で過ごし高山病で、飲み水はその前後の10日間に一口くらいという(何も口に入らないのに吐き気が収まらなく胃液まで出てしまって胃潰瘍になって下山)したという。普通の人はとっくに死んでいる。10日間後に助けられ、帰国してからは両手10本根元から全部手術で切断。それでも炊事などすべて家事こなしていると言う、針に糸だけは通せないそうだが。そして二人でまた中国やグリーンランドの山に登ったりしていると言う、これまたどんなになってもクライミングしたいと言う、フーテン老人先生顔負けの執念なのです。
最近のコメント